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2008年05月23日

奥鬼怒川 (2001・9・9)

沢の呼ぶ声 2001年9月9日 奥鬼怒川

台風15号の影響か雨足の強弱が激しい。

時折陽が射して渓間を風が駆け抜ける。予定を強行してやって来たことを少々後悔なんかしている私がいた。

今年はどうしたわけか地元不在の遠征釣行ばかりしていた。それはそれで十分楽しんで来たつもりであるし実際楽しい思い出が数多く残っている。しかし何かしっくり来ない思いに駆られて、こんな天気の中の奥鬼怒川に立ったわけである。

ホ-ムグランドの開拓が出来なかったことへの焦りかも知れない。

そんなわけで今回は1/25000地図から未入渓の渓を拾い出すという作業から始まった。

最近二日に一日は雨が降っているし、台風の影響で当日も雨が予測されていた。単独入渓と言うこともあり本流徒渉はなるべく避けたいところである。一つの沢を選び出し出来れば源頭まで詰める予定で出発した。

車止めから目指す沢まで歩き出す。

シャワ-の様な雨が降り注ぎ気持ち良い。湿度満点のジメジメした空気でゴアのカッパでも全身サウナ状態となる。

目的の沢まで大体40分位だろうと当たりをつけて歩いて来た。30分ほど歩くと

サワサワサワ・・・・ん?サワサワサワ・・・・んん!!

水流の変化がもたらすものか川の音が変わる。

サワサワサワ・・・沢沢沢!!!

呼んでいる、確かにこれは私に声を掛けている。

奥鬼怒川 (2001・9・9)

予定の沢の手前に一つ別の小沢が流れ込んでいるのは地図上で承知していたのだが、こうまで露骨に手招きされて素通りしてしまっては申し訳ない。ひとつご挨拶していく事にしよう!

出合いは何て言うことも無い小沢。

先を見ると小さな落ち込みから直径2m程の溜まりを作り、先は大きく左に曲って奥を見せないという巧妙な誘いの技術を駆使して誘惑している。

全く期待もせずに最初の落ち込みに竿を出す。 

クンッ!

油断した竿先を見事に引き込む魚信に慌ててアワセをくれたのだが時既に遅くナチュラルリリ-ス。

居るじゃん!!

バラシた落胆よりも魚信が有った事への喜びが大きい。

巧妙な誘惑技術にまんまとハマる自分に気付きながらも奥へ奥へと誘い込まれていく。
魚が居る事がわかれば次の作業は魚種確認だ。それには釣り上げなければならない。

とは言っても、もう私的には岩魚と決めてかかっている。

次々に落ち込みを作る渓相は正しく岩魚沢である。ヤマメは居ないだろうと判断する材料がもう一つ有るのだが、それは内緒にしておく。鉤掛かりする岩魚を予測して仕掛けは0.8と川虫3号スレに変更。

気合いを入れた一投が静かに流れに乗る。

クッ!

微妙な魚信に竿を送り込むと岩魚特有のゴツゴツ感が手に伝わってくる。軽く手首を返すと一気に抜き上がってしまった。6寸弱の岩魚である。

奥鬼怒川 (2001・9・9)

気を良くして釣り上がって行く。落ち込みや巻き返しのポイントには必ず魚信がくる。鉤を飲まれない様にアワセに気を使う。飲まれて出血させてしまうとリリ-スしても生き延びられないだろう。何時にない気遣いに自分でも可笑しくなる。

鉤掛かりが浅くワ-プする岩魚も多いがそれでも満足出来る。暫く釣りながら遡行すると落差1mのF1が現れた。

滝の定義とは何だろう?30cmの落ち込みを滝と呼ぶ釣り人はいない。

落差1mならば滝なのか?ウ~ン、難しい問題である。

しかし滝と呼んだ方が如何にも良い渓相の様に聞こえるので断じてF1出現と言い切ってしまう事にする。


F1からの落ち込みは大きく白泡を湧き上げて流れ出しへと向かっている。右の巻き返しが狙い目か・・・。慎重に竿を伸ばし仕掛けを投入した。すかさず魚信があり竿先が引き込まれる。

F1の主は7寸強の腹をふくらませた岩魚だ。良いパ-トナ-が見つかる事を祈って優しく流れに戻したが可愛い顔をしていたので大丈夫だろう。

F1を越えると一つ一つの落差が大きくなって来た。

右へ左へ蛇行しながら確実に高度を上げている。相変わらずポイントというポイントから岩魚が飛び出してくる。チャラ瀬では傍若無人に歩を進める人間に5cmにも満たない様な稚魚たちが右往左往している。もう充分釣りを楽しんだ私は竿を納めて岩魚ウォッチングに切り替える。しずしずと遠目から流れの淵を観察していく。一尾、二尾、見えた途端に岩陰に走り込む岩魚。私から見えれば向こうからも見えるのが道理である。

奥鬼怒川 (2001・9・9)

そろそろ朝食兼昼食にしようかと如何にも釣れそうな落ち込みからの淵尻に腰を下ろす。と目の前に岩魚が居るではないか!

私に気付いて逃げたつもりなのだろうか、岩に頭を突っ込んでジッとしている。これこそ頭隠して尻隠さずそのままである。(爆)

竿を納めて遡行に専念し出してから暫くすると岩肌が変わって来たのに気付いた。奥鬼怒特有のボロボロ岩が姿を消し、一枚岩のスラブ状が多く見られる様になって来た。滝もナメに変わり落差も大きくなる。飛ぶように流れる雲間から明るい陽が射して来た。

空の面積が徐々に広がる。源頭間近か・・・

中段に3mの直瀑を抱える4段20m程のナメ滝が現れる。

滝下で直角に曲がる流れで正面の岩の下は大きくえぐられている。見るからに岩魚が付きそうなポイントだ。

そそくさとケ-スから竿を抜き出して振り込む。ギュ~ン!と竿先が引き込まれる事を予測していた手元に特有のゴツゴツ感が伝わる。

アワセと同時に飛び出した岩魚は何と8cm!!

大場所ほど大物は居ないモノだと改めて思い直した出来事だった。

ナメ滝の右岸を滑らない様に注意しながら越える。この滝ならば岩魚は自力で上がれるだろう。試しに滝上で竿を出すと空かさず7寸が食い付いて来た。

居る居る!

奥鬼怒川 (2001・9・9)

まだ魚影は確認出来た。

意気揚々遡行を続ける私の前に幅10m・高さ7m程の直爆が現れた。端から端まで岩肌を隠す様に水のカ-テンが被っている。滝の上流は空が開け稜線もかなり近くに見える。多分開けた渓相が予測されるのだが両岸切り立って受け付けてくれない。

単独でもあるしここまで4時間を費やしている。

今日は此処まで、記念に竿を出すが主は不在だった。



タグ :釣行記

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