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2009年06月10日

栃木県箒川支流大蛇尾川(2003・7・20~21)

険渓なり 大蛇尾 2003年7月20日~21日 栃木県箒川支流大蛇尾川

栃木県箒川支流大蛇尾川(2003・7・20~21)「荻野さん、大蛇尾入った事あるかい?」いきなり川上さんに聞かれたが林道入口すらも知らない情け無い状態である。川上さんとは今期二度目の釣行で、前回ヘロヘロ状態を付きっ切りで叱咤激励、面倒見て頂いた事もあり、人知れず気合が入っていた私である。
 今回の釣行は渓泊り初体験という渓道楽高橋会員の新人研修(?)を兼ねて、お気楽マッタリ釣行とのふれ込みで高野氏からお誘いを受けて参加したのではあるが同行すれば一緒に研修させられてしまうレベルだった自分を忘れていた。(自爆)

 車止メには既に2台の車があった。取水堰堤まで林道を行く予定だったが先行者を考えて車止メ下の斜面から入渓と決める。

身支度を整えるいつもながらの緊張する時間帯を過ごす。ハーネスを着けようとする高野氏を「恥ずかしいからやめろよ!」と川上さんが笑い飛ばす。確かに大蛇尾あたりで3つ道具は大袈裟ではあると私も車中デポ用袋に用意していた三つ道具を取り出すことをしなかった。

私が先頭で踏み跡を追うように進む。明確だった踏み跡が怪しくなって来た。完全に見失った所で川上さんが先頭になり斜面を進む。新人の高橋さんを気使いルートを選んでくれている様子なのだが、我々も二の足を踏むような場所を平気で降りてしまう。足場の岩はかなり脆く気を抜くと落石を起こしてしまう。「石落とすなよ!」と言いながら先行する川上さんだが「痛てっ!」と言う声を何度か聞く。

 これを会話型で紹介すれば
 
高橋   「こんな所から入渓するのは初めてですよ。」
わたし  「いつも大体こんな感じですよ。ダイジです。」
高橋   「道がよく判りませんね?」
わたし  「ちょっと不明瞭ですがダイジですよ。」
高橋   「こっちですかね?」
わたし  「こっちじゃないな、向こうですね。」
高橋   「川上さん達はあっちに居ますよ!」
わたし  「じゃぁ、あっちです。」
川上   「このあたりから踏み跡は無いから降りられる所を行くぞ!」
一同   「おう!!」
川上   「石落とすなよ!」
高橋   「こんなとこ行くんですか?!あっ、石・・」      ・・・・ 「痛っ!」
高野   「普通ですよ。あっ!、石・・」              ・・・・ 「痛っ!」
わたし  「ダイジダイジ・・、あっ、石!!」            ・・・・ 「痛っ!」
高橋   「ホントこんなとこ行くんですか?!!」
ふたり  「行く、行く!」
高橋   「マジで行くんすか?!」
ふたり  「ん?・・・」
高野   「行くの?」
わたし  「行きたくない!」

 こんな具合で気が付いた時に我々は川上流スパルタ研修の真っ只中に居たのである。

ぶら下がりながらようやく足が届く場所を降り、頼りない草に命を預け、ズリズリの斜面をトラバースし、ひとかかえの落石に襲われながらも大蛇尾の流れを目で確認出来る場所まで降りて来た。あと50m程で沢床に立てるのである。
栃木県箒川支流大蛇尾川(2003・7・20~21)我々が休憩している間に川上さんが下方の様子を見に行った。

ところがなかなか帰って来ない。不安になった頃、何か叫ぶ声が聞こえた。川上さんが消えた斜面に様子を見に行くと「ザイル出せ!」と言っているではないか。高野氏にザイルを用意して貰う間に状況を聞くと下の様子を見るためにザイル確保が必要だと言うことだった。肩がらみにしたザイルを操りながら斜面に消えて行く・・・。

 再度現れた川上さんが浮かない顔で「高橋さんはザイル使えるか?」と聞いてくる。後方に確認するが色よい返事が無い。しかし「行く!」と言う。単に今来たところを帰る事が出来そうもない為の前進案である。

「懸垂で3m降りると3m横にテラスがあるんだけど、横に移動するのに足がテラスに届かない。真下は河原まで何にも無いんだよ・・。」要はスパッと河原まで切り立っていると言う事ではないか!

ザイルはダブルで15mしか無く、途中で宙ぶらりんの状態である。テラスには一人しか立つスペースが無く確保も出来ないと言う。高橋氏ばかりではなく私も言葉が出ない。高野氏に至っては三つ道具を置いて来た事への後悔が口に出る。早く河原に降り立ってこの恐怖から逃れたい気持ちと、進むにはそれなりの実力が必要なのだという現実がある。最終的には「止めよう!」川上さんの一声でルート変更となるのだが・・・

  我々が待機していた地点まで登り返し周囲を見渡したと思ったら上流方向にトラバースを始める。10m程先の岩場でザイルを操る姿が見える。右に左にルートを探している様だ。三人で眺めているとザックを下ろし、踏み台にして岩肌を登り、シュリンゲを使ってザックを引き上げようとしている。しかし途中の岩角に引っかかり上手く上がらず「早く来い!」とこちらを見ている。

この間の三人の会話

高橋   「どっちに行くんでしょうか?」
高野   「登り返すのかな?」
わたし  「違うみたい、あっち行ったもん。」
高橋   「どうするんでしょうね?」
わたし  「ザック下ろしてるよ・・。」
高野   「あそこ登るのかな?」
わたし  「多分ね・・・。」
三人   「ああ、登ってるよ・・・。」
高野   「登っちゃったよ!」
わたし  「ザック上げてるみたいよ・・」
高橋   「行くんですか?」
ふたり  「行くんでしょうね・・・」
わたし  「ああ、呼んでるよ~・・・」

栃木県箒川支流大蛇尾川(2003・7・20~21)川上さんのもとまで行くと順次ザックを別に上げて空身で登れと言う。お助けロープを下ろしてくれているので何とかクリアする。が、まだまだ・・・

そこから更にトラバースして枯れ沢に辿り着く。ザックだけを残して川上さんの姿は無い。「上か、下か・・・」どっちに転んでも良い事は無さそうだ。
川上さんが下方から現れ「上だ!」と言う。枯れ沢を林道まで詰める事になる。

頭大の岩がゴロゴロしている斜面を登り始める。4人で落石に注意しながら登るが「カチッ!」と音がするたびに全身が緊張する。

高度差150mほどを登り返して左の斜面に逃げる。木の根・木の枝に命を預け”手のひらよ、足の裏よ、吸盤になれ!”と祈りながら傾斜を50mほど攀じる。

辿り着いたところは支尾根の先端部三畳ほどの岩場だった。遠くに樹林が水平に切れた林道らしき空間が眺められる。支尾根にはきのこ採りらしき踏み後があり林道まで一気に登った。

藪を掻き分け倒れるように這い上がった場所は何と我々が車を置いた車止メから5分の地点。

「良いトレーニングだったろう!」と笑顔の川上さん。

ザイルワーク・懸垂・トラバース・ルートファインディング等々一連の研修が行われた場所が冒頭の写真にある谷あいの斜面だった。

林道に戻り取水堰堤まで1時間30分ほど何事も無く歩く。

河原に降り立ち雨をしのぐ事小一時間、上流から釣り人が降りて来る。「これで貸切だ!」と言う言葉と共に竿を振りながら遡行開始。テン場を探す川上さんを他所に三人で竿を振る。アタリ無し。次!アタリ無し。次!!アタリ無し。いい加減飽きたところでテン場に到着。ここまで魚信を見たのは高橋氏のみ・・・。

栃木県箒川支流大蛇尾川(2003・7・20~21) 雨の中でテン場設営。一夜の宿を川上さんの号令で作り上げる。これも研修だ。
風上に寝床と宴会場、風下に焚き火場。風の流れる方向を考慮した焚き木の並べ方。快適なテン場一つにも知識と経験が必要なのだ。

 焚き火を起こし着替えを済ませれば宴会モード。高橋氏は何よりこれが楽しみだったと笑顔満面。それぞれの食材を肴に酒が美味い。何から何まで初めての経験に目を輝かせながら今日の行動を川上さんに尋ねる高橋氏。その時々の考え、思いを正直に答える川上さん。何時に無く心地良く、また収穫の多い一夜だった。

夜明けて朝のひと時。昨日の疲れか川上さんも高橋氏もまだ寝ている。高野氏と二人焚き火を前に話をしていると一番乗りの釣り人が到着。「先行って良いですか?」と尋ねられたので「どうぞ!」と答える。栃木の渓はこれだからのんびり渓泊りの朝も迎えられない。これで釣りはバンザイだ。そう言えば昨日、川上さんもザイルを操って懸垂している最中に下の河原を悠々と歩く釣り人を見て苦笑してたっけ・・・。

 まあ、そんなこんなで釣りには期待しないまでも半日の釣り遡行を楽しむ。釣果は高橋氏に、アタリは高野氏に、そして私には何事も無くである。
テン場に戻り遅い昼を食べて撤収。
川を離れる時に漸く陽射しに包まれる。
林道をひたすら歩き昨日登り返した地点から丁度5分で車に到着。一同顔を見合わせ爆笑の幕切れだった。




タグ :釣行記

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