2008年09月28日
奥鬼怒川馬坂沢(2003.4.20)
生命と自然 2003年4月20日 奥鬼怒川馬坂沢
大岩によじ登った私の前は絶好のポイントだった。
夏日を記録した1週間、予想以上の雪代がゴンゴンと流れる馬坂沢本流に苦戦していた私に大物を予感させる落ち込みからの流れだった。手前にある太い倒木の向こう側に白濁した水が奔走して流れる。中央の狂った様な主流と、それとは対照的なゆったりとした大きな巻き返しが大岩魚を予感させた。焦る気持ちを抑え、仕掛け巻きから道糸をほどき、竿を伸ばそうと思った時、そいつが目に入った。
![奥鬼怒川馬坂沢(2003.4.20)](//img01.naturum.ne.jp/usr/pengintai/030420umasakas026.jpg)
”ドキッ!”岩魚が逃げてしまうかと思うほどの大きな鼓動。それほど私は驚き、恐怖し、後にしげしげと目を凝らすのだった。
大岩によじ登った私の前は絶好のポイントだった。
夏日を記録した1週間、予想以上の雪代がゴンゴンと流れる馬坂沢本流に苦戦していた私に大物を予感させる落ち込みからの流れだった。手前にある太い倒木の向こう側に白濁した水が奔走して流れる。中央の狂った様な主流と、それとは対照的なゆったりとした大きな巻き返しが大岩魚を予感させた。焦る気持ちを抑え、仕掛け巻きから道糸をほどき、竿を伸ばそうと思った時、そいつが目に入った。
![奥鬼怒川馬坂沢(2003.4.20)](http://img01.naturum.ne.jp/usr/pengintai/030420umasakas026.jpg)
”ドキッ!”岩魚が逃げてしまうかと思うほどの大きな鼓動。それほど私は驚き、恐怖し、後にしげしげと目を凝らすのだった。
落ち込みの大岩に屋根のように架る倒木の下、私を見つめる二つの目。
そこには私以上に恐怖するカモシカの姿があった。
増水した流れに不用意に足を踏み入れたのか、崖から足を滑らせたのか、奔走する冷たい雪代に半身が浸かっている。四肢が精一杯に川底をつかみ流されんとする姿。そこに現れた人間という最大の敵に彼は恐怖し絶望を感じたのだろうか。轟々と流れる主流が徐々に魔の手を伸ばしカモシカの身体を呑み込もうとしている。”手も足も出ない”とはこの事か、私は激流に揉まれ下流に流される彼の姿を見送る事しか出来なかった。
自然の成り行きと言えばそうなのではあるし、渓では日常的に起こる出来事のひとつ。文明が発達した今ではテレビなどで目にしたことも幾度かある。しかし現実に目の前で繰り広げられた景色に私は衝撃し、人間の良心と悪心、臆病と無力を感じた。私は釣り人として目の前で命が消えていく事に慣れていると思っていたが、その命には大小が付けられていたのだろうか?
![奥鬼怒川馬坂沢(2003.4.20)](http://img01.naturum.ne.jp/usr/pengintai/030420umasakas004.jpg)
さて、話は釣りだった。前記のように只でさえ本流嫌いの釣り下手が轟々と流れる雪代に太刀打ち出来る筈も無く、やる気も起きないままの遡行が続いた。救いと言えば釣り名人渓雄会高橋会長の存在で、彼が居れば岩魚を見ずに帰ることは無いだろう。そして期待通りに岩魚を釣り上げてくれるのだからどこぞの会長さんとは大違い。「爪の垢でも頂いて飲めば多少は」と思うが、どこぞの会長さんはおにぎりをおねだりしているのであった。(自爆)
波に乗った高橋会長、次のポイントで30cmの岩魚相手に竿をしならせているではないか。歓声を尻目に「俺も!」と良さげなポイントに竿を出し、やっと来た七寸で興奮を収めた。そして前記の光景にぶち当たるのだった。
岩魚の姿を見て生気も甦り順調に遡行を続け、スリ沢出合いに到着。出合いは8mほどの滝になっている。前回の釣行から滝上狙いが目的という須藤くんの先導で右岸側を高巻く。源流バリバリの高橋会長と若手有望株20代の須藤くんがガッシガッシと急登して行く後ろから、ヨタヨタ・ズリズリと上がって行く姿は何とも情けないものだ。それでもスリ沢に下降した時には涼しい顔で「どうも~!」を忘れないのである。
![奥鬼怒川馬坂沢(2003.4.20)](http://img01.naturum.ne.jp/usr/pengintai/030420umasakas030.jpg)
下降点で昼食。ここで爪の垢ならぬおにぎりをパクつく私。食事中は雨も止み、薄日も射して来る。昼食後、本流より沢が好きだと言う須藤くんに先行して
頂く事にしてスリ沢の様子を見る。
雨で増水してはいるが本流ほど白濁しておらず須藤くん以上に沢好きの私にも釣り頃サイズである。ただ、単調な流れに、釣り・遡行共に多少飽きる。時間の関係で
奥まで遡行出来なかったが次回のお楽しみとしよう。
![奥鬼怒川馬坂沢(2003.4.20)](http://img01.naturum.ne.jp/usr/pengintai/030420umasakas039.jpg)
午後1時を回ったところで退渓。
今日は土呂部側のゲートから延々お散歩である。川俣大橋側のゲートが閉鎖と聞き土呂部側から入渓したのだがこちらのゲートも閉鎖だった。
林道を歩いているうちにゲートを自主開放した車に追い越され、ついには4台の車に追い越された朝だった。帰りは逆に誰も居ない林道をトボトボ歩く。トボトボがヘロヘロになりフラフラになる過程はいつもと変わらなかった。到着したゲートは我々を哀れむかのように見事に開け放たれていた。
タグ :釣行記
Posted by 副隊長 at 17:14│Comments(0)
│遡行記
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